| 八甲田山 |
| 製作:橋本 忍・野村芳太郎 田中友幸 原作:新田次郎 監督:森谷司郎 脚本:橋本 忍 撮影:木村大作 音楽:芥川也寸志 美術:阿久根巖 出演:高倉 健・北大路欣也・島田正吾 三國連太郎・丹波哲郎・藤岡琢也 加山雄三・小林桂樹・大滝秀治 前田 吟・緒方 拳・加賀まり子 秋吉久美子・菅井きん・栗原小巻 |
| 日露戦争の2年前の1902年1月、青森県第五連隊と弘前第三十一連隊が、厳冬の八甲田山を北と南の両方から同時に踏破してすれ違うという行軍の訓練を行なった。ロシアとの戦争にそなえて、はたして雪の中で軍隊はどれだけ行動できるかという実験であった。 誰もが無謀だというこの計画を与えられた弘前連隊の徳島大尉(高倉健)は、雪になれた頑健な兵士ばかり27名という少数編成で、遠く十和田湖まで11日間かけて迂回するという慎重な計画をたてて成功した。 青森連隊の計画立案をまかされた神田大尉(北大路欣也)も、やはり慎重に少数編成を主張するが、大隊長山田少佐(三國連太郎)はこれを拒否、210名という編成で八甲田山をつき抜けることになる。特別編成ではない普通の部隊行動の実験である。弘前連隊との対抗意識でより困難で大きなことをやって手柄をたてたかったのだろう。 しかしこのとき、日本の気象史上記録的な寒気をともなった荒天がこの地方を襲ったのである。慎重に慎重にと行動した弘前連隊の27名は全員なんとか無事に計画を遂行して局地に着くことができたが、青森連隊の210名は雪の恐ろしさを知らぬ山田少佐の口出しで指揮系統も混乱してしまい、八甲田山中で立往生して飢えと寒さで次々と死んでいった。生き残れたのは僅か12名だった。 この映画は実際に起ったこの悲惨な集団遭難事件を劇映画として再現したものである。そのために俳優たちの演じる部隊が雪の深い冬の八甲田山に行き、寒さにふるえながらロケーション撮影を行なった。山中の広大な風景では荒天を再現するわけにはゆかないので、じつさいに風が吹くまで、スタッフと俳優たちは雪の中で何時間も待ちつづけては少しずつ撮影する。こうして骨まで凍りそうな寒気がカメラを通じて観客に伝わってくるような凄い場面が撮れて、迫力のある映画になった。 場面ごとに雪と風がいっそう激しくなるのを見ていて、早くこのすさまじい雪地獄の場から脱出したいと願う気になるほど、豪雪と嵐が現実感をもって撮れているところがこの映画の見どころである。まあ、日本映画史上、あえていちばん肉体的苦痛に耐えながら撮った、体力の映画と言えるかもしれない。こういう苛烈な自然描写があるから、晴天のこの地方の風景のやさしい美しさもまたひとしお心にしみてくる。 森谷司郎監督による文字どおりの力作であった。 |