| 蒲田行進曲 |
| 製作:角川春樹 原作:つかこうへい 監督:深作欣二 脚本:つかこうへい 撮影:北坂 清 音楽:甲斐正人 美術:高橋 章 出演:風間杜夫・平田満・松坂慶子 高見知佳・蟹江敬三・原田大二郎 千葉真一・真田広之・志穂美悦子 |
| 戦後の映画黄金期を背景に、花形スターと付き人の大部屋俳優のサド・マゾ的関係を軸に、スターのの子を宿した落ち目の愛人女優を交えた三人の奇妙な人間関係を、映画製作の内幕に絡ませて描き出した人情喜劇の傑作。 |
| 花形スターの銀四郎(風間杜夫)は、妊娠した恋人の女優・小夏(松坂慶子)を彼の取り巻きのひとり・ヤス(平田満)に押しつけて結婚させてしまう。ヤスは危険を顧みず生活費のためスタントマンをやるが、生傷が絶えない。 演劇界の雄・つかこうへいの原作、脚本を、深作欣二演出は正攻法に描いて成功を収めた。 松坂が二人の間で揺れ動く女心を好演し、見事なヒロインぶりを見せた。カツドウ屋たちの心意気を感じさせる力作。各映画賞を独占した作品。 (ぴあシネマクラブ日本映画編2002〜2003より) |
| 撮影所の華やかなりし時代によせる、けたたましい笑いと憑かれたようなアホな情熱の物語。 映画の黄金時代、撮影所は人気スターたちを中心に威勢よくクレージーに動いていた。ただしその威勢の良さには中身はあまりなく、見得がやたらと増幅されている。 銀ちゃん(風間杜夫)はスターだが、じつは小心翼々。愛人の落ち目の女優小夏(松坂慶子)が妊娠すると、人気を気にして自分の取り巻きの大部屋俳優ヤス(平田満)に押しつける。ヤスはこの身勝手な扱いを甘んじて受け、銀ちゃんのためにますます忠実につくす。 この大部屋俳優こそが主人公であり、彼の、憧れのスターに対する途方もない忠実さという倒錯的な心理がこの映画の核心である。それを平田満がまことにエネルギッシュに好演している。 ヤスは単純に義理人情や利害関係だけで銀ちゃんの浮気の始末を引き受けるわけではない。銀ちゃんのためなら金も名誉もいらないというところまで自分を追い込んではじめてスターのファンの神髄に達したことになると思っているのだ。この金も名誉もいらないという一途さをもう一歩徹底させると命もいらないということになる。さあ、そこまでゆけるかどうか。 彼は人気が落ち目で焦っている銀ちゃんの起死回生の見せ場のために命がけのスタントを買って出る。新撰組ものの時柁劇の寺田屋斬り込みの場面で、宿屋の中央の大広間の40段もある特別あつらえの高い高い階段の上から、斬られて頭を下にして転げ落ちるという、もの凄い″階段落ち″をやるのだ。その一場面の撮影に関してだけは彼はスタッフみんなからどんなスターよりも大事にされる。そこで彼は舞い上ってスターなみのわがままを言ってみたりする。どんなにいばってもみんながへいこらしてくれることの嬉しさ。自分を無にして無内容な男につくすという、この本来なら屈辱の極致であるはずの行為が同時に恍惚の極致につうじるのだ。バカバカしいお話のように見せかけて、じつはここには権威主義というものの核心に迫る猛烈な毒を含んだ諷刺がある。 (佐藤忠男著 「日本映画300」(朝日文庫) より) |