青春残酷物語
昭和35(1960年)、松竹大船

製作:池田幸雄
監督:大島 渚
脚本:大島 渚
稚影:川又 昂
音素:真鍋理一郎
美術:宇野耕司

出演:川津祐介・桑野みゆき・久我美子
    渡辺文雄・二本柳寛・佐藤慶
    小林トシ子・田中晋二・山茶花究
    森川 信・氏家慎子・浜村 純


日本映画界にヌーベルバーグの嵐を吹きおこした若き日の大島渚作品である。
女子高校生の真琴(桑野みゆき)は、中年男に車に乗せてもらって温泉マークの前でサヨナラと言うような不良少女じみた日々を過ごしている。
ある日、そうしてさそわれた中年紳士にこっぴどく殴られているところを、大学生の清(川津祐介)に助けられる。二人は友達になるが、清は、金持の中年女と寝て小遣いを貰う、というようなことを平気でする青年で、真琴にもつつもたせ同然のことをやらせる。いつもなにかに対して怒り狂っているように見える清に、真琴は共感し、自分もぐいぐい、そういう放埒な生活の中に入ってゆく。
無気力な父や、かつて学生運動の活動家だった姉(久我美子)が忠告しても反発するばかりである。しかし真琴は、清が自分をわざと冷酷に扱うのに対抗しつづけるのも、じつは、かなり辛いのである。真琴は妊娠し、姉の恋人の医者(渡辺文雄)の診療所でおろす。その費用をかせぐために清も荒かせぎをする。
真琴が胎児をおろしたベッドに清が見舞いに来る。二人ははじめて、深い挫折感におそわれるが、清は、なにくそ! という顔をしてリンゴをかじりつづける(リンゴまるまる一個かじりつくすまで、カメラは川津祐介を据えっぱなしで写しっづける)。隣の部屋では、真琴の姉と医者が、自分たちの青春時代の闘争の挫折が、つづく妹たちの世代を希望のないものにし、彼らをもまた挫折させることになったのだ、と、やや悲愴にひねくれて語り合っている。政治活動における挫折と、恋愛における挫折とを重ね合わせてみせた場面である。

清は言う。俺たちは自分を道具や売物にして生きてゆくしかないんだ、世の中がそうなっているんだ、と。真琴は、二人でなんとかやってゆこう、と言うが、清はとりあわない。さいごに、清は愚連隊にヤキをいれられて死に、おなじころ、真琴も、男にさそわれたその車から逃げ出そうとして路上をひきずられて死んでしまう。

大島渚はこの映画で、天下泰平と言われていた時代の保守化へのいらだちをすべてたたきつけるように、荒々しい映像をつくり、その画面の底から、うずくような情熱をほとばしらせた。暗い画調の中に燃えるような熱い色彩をちりばめた川又昂のカメラも見事だったし、いたるところに用いた手持ちカメラの不安定なカメラワークも新鮮だった。
               (佐藤忠男著 「日本映画300」(朝日文庫) より)