丹下左膳餘話
百萬両の壺
昭和10(1935年)、日活京都


原作:林不忘
監督:山中貞雄  
脚本:三村伸太郎 
撮影:安本淳 
音楽:西梧郎

出演:大河内伝次郎・喜代三
    宗春太郎・沢村国太郎
    花井蘭子・深水藤子・高勢実乗


29歳の若さで戦死した山中貞雄監督の、現在も残っている3本の作品の一つ。夭折の天才として今もなお語り継がれる山中貞雄は、サイレント期からトーキー初期にかけて、短い間ではあったが多くの素晴らしい映画と脚本を手掛け、日本映画史に多くの足跡を残している。
この「丹下左膳
話・百萬両の壺」は山中の最高傑作に一つ。
大河内伝次郎の丹下左膳といえば、戦前(昭和3年)は伊藤大輔監督の「新版大岡政談」、戦後はマキノ雅弘監督による大映の時代劇シリーズ(全3本)によって、手掛けられたチャンバラものを代表するシリーズ。その殺気あふれる剣戟ものを山中はハリウッドの人情喜劇を頭において時代劇ホームドラマの喜劇に換骨奪胎、見事にアレンジしてしまった。
ちょっとのんきな左膳とその女房のお藤はひょんなことからみなしごチョビ安を育てることになる。そのチョビ安が金魚入れにして持ち歩いているコケ猿の壺は、実は百萬両の謎を秘めた壺だった。
 実にテンポの良い演出と随所にちりばめられたユーモアで、今もその輝きを失わない必見の名作である。
                   (ぴあシネマクラブ日本映画編2002〜2003より)