山田洋次
やまだようじ

                      経   歴

1931年9月13日、大阪府宝塚生まれ。
2歳の時、満鉄技術者だった父に従い満州に移住、14歳までの多感な時期を過ごす。
1954年、東大を卒業して松竹入社。大船撮影所演出助手となり、川島雄三、野村芳太郎、渋谷実らにつく。助監督としては評価が低かったが、師である野村芳太郎の推薦で、
1961年、「二階の他人」で監督デビュー。
以後、喜劇映画に卓抜した才を示し、1964年、ハナ肇主演の「馬鹿」シリーズを手がけた後、1969年からスタートした「男はつらいよ」を国民的映画に押し上げ驚異的長寿シリーズとする。


山田洋次といえば寅さん、寅さんといえば山田洋次。シリーズ四十作を超える国民映画の生みの親として、今や国民的大監督となってしまった感のある山田洋次はしかし、まだ五十代の若さ、松竹では大島渚と同期入社である。
山田監督の代表作は勿論『男はつらいよ』、そして『幸福の黄色いハンカチ』、三部作とされる『家族』『故郷』『同胞』ということになるのだろうが、偏見を覚悟でいえば、その映画歴で最も映画的躍動感と魅力に溢れているのは、ハナ肇主演の馬鹿シリーズ≠ナある。『馬鹿まるだし』ではダイナマイトの爆発で失明した主人公がなみだながらに未亡人に愛を告白し、『馬鹿が戦車でやってくる』では主人公の運転する戦車が弟の死体を抱えたまま海へ消えてゆく。喜劇ベースの中に辛辣な社会批判をこめたその作風は今なお斬新で、また慄然とさせるものがある。また『運がよけりゃ』や『吹けば飛ぶ男だが』など、寅さん以前の喜劇作品にもブラックなコメディセンスが光っていた。還暦を過ぎた寅さんの達観した映画もいいが、こうした山田喜劇の原点に立ち帰った作品も是非また撮ってほしい。

          (文藝春秋 『日本映画ベスト150』執筆・細川まもる)より


山田洋次監督の作品

作品タイトル 制作年度 出演俳優 賞・コメント
二階の他人 1961年 小坂一也・葵京子・平尾昌章 山田洋次監督昇進第一作。
下町の太陽 1963年 倍賞千恵子・勝呂誉・早川保・待田京介・石川進 倍賞千恵子の歌う同名が大ヒット曲になる。
馬鹿が戦車でやってくる 1964年 ハナ肇・犬塚弘・岩下志麻・松村達雄花沢徳衛・谷啓・東野英次郎・飯田蝶子  ある男が除隊の時にタンクを納屋に隠しておいて、ある日、それで暴れ出す≠ニいう團伊玖磨のひと口話をモチーフに、山田洋次がシナリオ化。山田監督初期の代表作。
馬鹿まるだし 1964年 ハナ肇・桑野みゆき・花沢徳衛・高橋とよ犬塚弘・長門勇・渥美清・藤山寛美 藤原審爾の原作は、以前に森繁久弥出演で「安五郎出身」で映画化されたが、山田洋次が自分のスタイルを確立するきっかけになった作品。
いいかげん馬鹿 1964年 ハナ肇・岩下志麻・松村達雄・花沢徳衛 山田洋次監督が喜劇における才能を世に示した「馬鹿まるだし」に続く一編。
霧の旗 1965年 倍賞千恵子・滝沢修・露口茂・新珠三千代・川津祐介 松本清張原作の映画化。
運がよけりゃ 1966年 ハナ肇・犬塚弘・武智豊子・倍賞千恵子・
安田伸・桜井センリ
落語通の山田洋次が、落語の「ラクダの馬さん」「寝床」「つけ馬」などを素材に描いた長屋喜劇。
なつかしい風来坊 1966年 ハナ肇・有島一郎・倍賞千恵子・中北千枝子・真山知子・山口崇・久里千春  
山田喜劇の頂点の一つ。
愛の讃歌 1967年 中山仁・倍賞千恵子・伴淳三郎・有島一郎  千秋実・小沢昭一・太宰久雄・北林谷栄  フランスの作家、マルセル・パニョルの小説「ファニー」を翻案した人情喜劇。
喜劇・一発勝負 1967年 ハナ肇・倍賞千恵子・加東大介・瞳ひかる 山田洋次=ハナ肇コンビの一発≠烽フの一編。
九ちゃんの
   でっかい夢
1967年 坂本九・倍賞千恵子・竹脇無我・谷幹一・佐山俊二・渡辺篤 山田洋次が監督したドタバタ・コメディ。
ハナ肇の
    一発大冒険
1968年 ハナ肇・倍賞千恵子・倍賞美津子・犬塚弘 ・桜井センリ 山田洋次=ハナ肇コンビの一発≠烽フの第2弾。
吹けば飛ぶよな男だが 1968年 なべおさみ・緑魔子・有島一郎・ ミヤコ蝶々・犬塚弘・佐藤蛾次郎 
寅さん∴ネ前の初期・山田洋次の傑作の一つ。
喜劇・一発大必勝 1969年 ハナ肇・倍賞千恵子・谷 啓・犬塚弘 
山田洋次=ハナ肇コンビの一発≠烽フの一編。
家族 1970年 井川比佐志・倍賞千恵子・笠智衆・前田吟 九州・長崎の小さな島を出て、北海道の開拓部落は向かう5人家族の姿を描く異色のロード・ムービー。
故郷 1972年 井川比佐志・倍賞千恵子・笠智衆・前田吟・伊藤千秋・伊藤まゆみ・渥美清 山田洋次の素朴な庶民を描いたリアリズム映画の一本。
同胞 1975年 倍賞千恵子・寺尾聡・岡本茉莉・下条アトム・渥美清 岩手県・松尾村で実際にあった話をモデルに統一劇場≠ニいう新劇サークルを実際に登場させたドキュメンタリー・タッチのシリアスドラマ。
幸福の黄色いハンカチ 1977年 高倉健・倍賞千恵子・武田鉄也・桃井かおり・太宰久雄・渥美清・たこ八郎 
ヒット・ポップス「幸せの黄色いリボン」から発想を得て作られた感動作。
遙かなる山の呼び声 1980年 高倉健・倍賞千恵子・ハナ肇・武田鉄也・鈴木瑞穂 北海道の酪農の街・中標津の美しい四季を背景に、誤って人を殺して逃亡中の男と、牧場を経営する未亡人、そして小学生になるその子供との交流を描いた人情ドラマ。
キネマの天地 1986年 中井貴一・有森也美・渥美清・松坂慶子・三崎千恵子・すまけい・笠智衆・岸部一徳・桜井センリ・山本晋也なべおさみ・笹野高史・田中健・堺正章 松竹が大船撮影所50周年記念として、全力を挙げて取り組んだ大作。
ダウンタウン・ヒーローズ 1988年 薬師丸ひろ子・中村橋之助・柳葉敏郎尾美としのり・杉本哲太・坂上忍・渥美清
 
脚本家・早坂暁の自伝的小説を山田洋次が映画化。
息子 1991年 三國連太郎・永瀬正敏・和久井映見原田美枝子・田中邦衛・田中隆三・いかりや長介 椎名誠原作「倉庫作業員」をもとに、山田洋次が久々に手掛けた社会派ドラマ。
学校 1993年
西田敏行・竹下景子・萩原聖人・中江有里・新屋英子・翁華栄・神戸浩・裕木奈江・渥美清・大江千里・笹野高史大和田信也・薗佳也子・坂上二郎・すまけい・小倉久寛・田中邦衛
名匠・山田洋次が15年間温めていた教育の喜びというテーマを通して、人間の幸福を問いかける感動作。
学校U 1996年 西田敏行・吉岡秀隆・浜崎あゆみ・神戸浩・中村富十郎・油井昌由樹・真野きりな・泉ピン子・原日出子・
「学校」の姉妹編。
北海道の高等養護学校を舞台に、問題児ふたりの成長を見守る教師の姿を描く。
虹をつかむ男 1996年 西田敏行・吉岡秀隆・田中裕子・田中邦衛・倍賞千恵子・すまけい・柳沢慎吾・永瀬正敏・柄本明
渥美清が亡くなったため終了した「男はつらいよ」シリーズに変わって、松竹の正月映画として登場した人情ドラマ。
虹をつかむ男
 南国奮闘編
1997年 西田敏行・吉岡秀隆・小泉今日子・田中邦衛・倍賞千恵子・松坂慶子・相川翔
映画をこよなく愛する映画館主と人々の交流を描く人情喜劇第2弾。
学校V 1998年 大竹しのぶ・黒田勇樹・小林稔侍・ケーシ高峰・吉岡秀隆・田中邦衛 日本経済を襲った大不況を反映し、中高年向けの職業訓練学校に舞台を移したシリーズ第3作。
十五才・学校W 2000年 金井勇太・麻実れい・赤井英和・秋野暢子・小林稔侍・丹波哲郎・高田聖子・前田吟 学ぶ所を学校ではなく外の世界に目を向けて描くシリーズ第4作。
(ぴあシネマクラブ日本映画編2002〜2003より)

「男はつらいよ」シリーズ(全48作品)
  
作品タイトル 制作年度                出演俳優
レギュラー渥 美清・倍賞千恵子・前田 吟
   森川 信(9作の柴又慕情より松村達雄、               その後下条正巳と移る。)   
三崎千恵子・笠智衆・佐藤蛾次郎・太宰久雄
男はつらいよ 1969年 光本幸子・志村喬
続・男はつらいよ 1969年 佐藤オリエ・東野英治郎・山崎努・ミヤコ蝶々
フーテンの寅
  (監督・森崎 東)
1970年 新玉三千代・香山美子
新・男はつらいよ
  (監督・小林俊一)
1970年 栗原小巻
望郷篇 1970年 長山藍子・井川比佐志
純情篇 1971年 若尾文子・宮本信子・森繁久弥
奮闘篇 1971年 榊原るみ・田中邦衛
寅次郎恋歌 1971年 池内淳子・志村喬
柴又慕情 1972年 吉永小百合・宮口精二
10 寅次郎夢枕 1972年 八千草薫・米倉斉加年・田中絹代
11 寅次郎忘れな草 1973年 浅丘ルリ子
12 私の寅さん 1973年 岸恵子・武田鉄也
13 寅次郎恋やつれ 1974年 吉永小百合・宮口精二
14 寅次郎子守歌 1974年 十朱幸代・上條恒彦
15 寅次郎相合い傘 1975年 浅丘ルリ子・船越英二
16 葛飾立志篇 1975年 樫山文枝・桜田淳子
17 寅次郎夕焼け小焼け 1976年 太地喜和子・宇野重吉
18 寅次郎純情詩集 1976年 京マチ子・壇ふみ
19 寅次郎と殿様 1977年 嵐寛寿郎・真野響子
20 寅次郎頑張れ 1977年 大竹しのぶ・中村雅俊・藤村志保
21 寅次郎わが道をゆく 1978年 木の実ナナ・武田鉄也
22 噂の寅次郎 1978年 大原麗子
23 翔んでる寅次郎 1979年 桃井かおり・布施明
24 寅次郎春の夢 1979年 香川京子・林寛子・ハーブ・エデルマン
25 寅次郎ハイビスカスの花 1980年 浅丘ルリ子
26 寅次郎かもめ歌 1980年 伊藤蘭・村田雄浩
27 浪花の恋の寅次郎 1981年 松坂慶子・芦屋雁之助
28 寅次郎紙風船 1981年 音無美紀子・岸本加世子
29 寅次郎あじさいの恋 1982年 いしだあゆみ・片岡仁左衛門
30 花も嵐も寅次郎 1982年 田中裕子・沢田研二
31 旅と女と寅次郎 1983年 都はるみ・吉岡秀隆
32 口笛を吹く寅次郎 1983年 竹下景子・中井貴一
33 夜霧にむせぶ寅次郎 1984年 中原理恵・佐藤B作
34 寅次郎真実一路 1984年 大原麗子・米倉斉加年
35
寅次郎恋愛塾 1985年 樋口可南子・平田満・初井言栄・吉岡秀隆
3 柴又より愛をこめて 1985年 栗原小巻・川谷拓三・美保純・吉岡秀隆
3 幸福の青い鳥 1986年 志穂美悦子・長渕剛・吉岡秀隆
38 知床旅情 1987年 三船敏郎・竹下景子・淡路恵子
39 寅次郎物語 1987年 秋吉久美子・五月みどり・伊藤祐一郎・吉岡秀隆
40 寅次郎サラダ記念日 1988年 三田佳子・三田寛子・尾美としのり・奈良岡朋子
41 寅次郎心の旅路 1989年 竹下景子・淡路恵子・柄本明・吉岡秀隆
42 ぼくの伯父さん 1989年 後藤久美子・壇ふみ・吉岡秀隆
4
寅次郎の休日 1990年 後藤久美子・吉岡秀隆・夏木マリ・宮崎美子
4
寅次郎の告白 1991年 後藤久美子・吉岡秀隆・吉田日出子
4
寅次郎の青春 1992年 風吹ジュン・永瀬正敏・夏木マリ・後藤久美子
46
寅次郎の縁談 1993年 松坂慶子・島田正吾・光本幸子・桜井センリ
4
拝啓寅次郎様 1994年 牧瀬里穂・小林幸子・かたせ梨乃・吉岡秀隆
48
寅次郎紅の花 1995年 浅丘ルリ子・夏木マリ・後藤久美子・田中邦衛


寅次郎ハイビスカスの花
      (特別編)
1997年 浅丘ルリ子・江藤潤・新垣すず子・比嘉美也子